部屋にミッドセンチュリーインテリアを取り入れるポイント
ミッドセンチュリーインテリアは、曲線を活かしたデザインとユニークな色使いが魅力です。
しかし、個性的な見た目がゆえに、部屋に取り入れるのが難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、部屋をミッドセンチュリースタイルにまとめる際のポイントや、賃貸物件でのアレンジ方法を紹介します。
モダンな雰囲気のインテリアで、部屋をおしゃれな空間に変えたい方は、ぜひ参考にしてください。
ミッドセンチュリーインテリアとは
ミッドセンチュリーインテリアとは、20世紀半ばに発祥したインテリアのことです。
不要な機能を排除した設計と曲線を活かした見た目、そして彩度の高いビビットカラーが特徴です。
近未来的なデザインも多く、ミッドセンチュリーインテリアでまとめた部屋は、まるで現代アートのようだと評されます。
なお、ミッドセンチュリーインテリアは、“ミッドセンチュリーモダン”とよばれることがあります。
ミッドセンチュリーインテリアの発祥と歴史
そもそも、ミッドセンチュリーとは“世紀の中間”を意味する言葉で、1940~1960年代のアメリカで生まれた家具やインテリアのデザインを指します。
当時はアメリカンモダンとよばれており、ミッドセンチュリーという名称が使われるようになったのは、1980年代に入ってからです。
第二次世界大戦の戦勝国であるアメリカは、自国が戦地にならなかったため、戦後の産業復帰が非常に早く、軍需産業で生まれた新しい加工技術で、製造業を盛り上げました。
そんななか、もともと戦争用に開発されたプライウッド(成型積層合板)とFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を用いて、ミッドセンチュリースタイルの家具が作られます。
戦前の家具は、時間のかかる伝統的な方法で作られていましたが、新しい技術とシンプルなデザインを採用したことによって、生産量が一気に増加しました。
今までになかった斬新なデザインのミッドセンチュリーインテリアは、アメリカで瞬く間に人気となり、現在でも根強い人気を誇っています。
日本でも1995年に雑誌『BRUTUS』で特集されたのをきっかけに、ミッドセンチュリーブームが起こりました。
ミッドセンチュリーインテリアの特徴
ここからは、ミッドセンチュリーインテリアの特徴を、さらに詳しく解説します。
特徴を参考にして、ご自身の部屋にどう取り入れるか、イメージを膨らませてみてください。
特徴①シンプルでモダンなデザイン
繰り返しになりますが、ミッドセンチュリーインテリアは、余計な装飾と無駄を省いたシンプルかつモダンなデザインが一番の特徴です。
近代的な雰囲気を感じられ、部屋に取り入れるだけで、たちまちおしゃれな空間へと様変わりします。
また、シンプルなだけでなく、実用性も兼ね備えており、身体へのフィット感や使いやすさも考慮されています。
特徴②曲線的なフォルム
ミッドセンチュリーインテリアの特徴の一つに、“曲線を活かしたデザイン”があります。
戦前は加工技術の問題で、直線的な家具しか製造できませんでしたが、戦後の加工技術の発達によって、丸みを帯びた曲線的な家具もデザインできるようになったのです。
インテリアを丸みのあるソファやテーブルでそろえると、部屋全体に統一感が生まれます。
特徴③ビビットカラー
鮮やかで目が覚めるようなビビットカラーもまた、ミッドセンチュリーインテリアの特徴です。
戦後のアメリカでは、苦しかった戦争の暗い雰囲気から脱却するように、開放的で明るい色が好まれました。
また、当時ポップ・アートやミニマル・アートが流行し始めたことも、ミッドセンチュリーインテリアにビビットカラーが採用された影響として考えられています。
ビビットカラーはレトロな雰囲気を感じさせ、部屋にパキッとしたアクセントを加えてくれます。
ミッドセンチュリーインテリアと北欧インテリアの違い
ミッドセンチュリーインテリアとデザインが類似するものに、北欧インテリアがあります。
北欧インテリアは、曲線を多用したデザインと華やかな色使いが用いられており、ミッドセンチュリーインテリアとの共通点が少なくありません。
日照時間が短く冬季が長い北欧では、少しでも気分を明るくしようと、カラフルなデザインが採用されています。
ミッドセンチュリーインテリアと比べて北欧インテリアには、自然や動物のモチーフが多く描かれており、アースカラーなど、温かみのある色使いが特徴です。
混同されやすいデザインですが、それぞれ背景にあるカルチャーが異なります。
ただ、ミッドセンチュリーインテリアと北欧インテリアは相性が良いので、両者を組み合わせて取り入れるのもおすすめです。
部屋にミッドセンチュリーインテリアを取り入れるポイント
現在お住まいの部屋に、ミッドセンチュリーインテリアを取り入れる際、ポイントを踏まえずに設置してしまうと、「なんだかイメージと違う……」という事態になりかねません。
ここからは、おしゃれな部屋作りに欠かせない4つのポイントを解説します。
ポイント①床には落ち着いた素材を使う
ミッドセンチュリーインテリアを取り入れる場合、床材はオークやチーク無垢材など淡色系のものを選ぶと、鮮やかになりがちな部屋の印象をグッと引き締めてくれます。
無垢材を選んだ場合、経年劣化による色の移り変わりも楽しめるでしょう。
ミッドセンチュリーインテリアは、ビビットカラーや先鋭的なデザインのものが、数多く販売されています。
そのため、床材はシンプルな種類を選ぶと、全体との調和がとれます。
ワックス処理がされているのであれば、ダークブラウンなどの重厚感のある床材がおすすめです。
ポイント②2~3色のポイントカラーを扱う
ミッドセンチュリースタイルでまとめる際は、最初にメインとなる色を選び、それに差し色を加えた2~3色のポイントカラーを決めましょう。
メインとなる色は落ち着いた淡色系で、差し色には鮮やかなビビットカラーを選ぶと、部屋にメリハリが出て、ほどよいコントラストを演出できます。
ただし、ソファやテーブルなど、主役となるインテリアにビビットカラーのアイテムを取り入れると、部屋全体がごっちゃついた印象になってしまうため、注意が必要です。
メインとなる色の彩度を下げると、明るい色でも悪目立ちせずにまとまります。
ポイント③レトロフューチャーな雑貨を置く
レトロフューチャーな雑貨も、ぜひ取り入れてほしいアイテムの一つです。
レトロフューチャーとは「過去の人々が思い描いた未来像」を意味し、これがデザインされた雑貨は、どこか懐かしさを感じます。
ブリキ看板やポップ・アートのポスター、アートパネルは、飾るだけでさらにハイセンスな空間へと導いてくれる素敵なアイテムです。
また、ビビットカラーの雑貨を置くと、差し色としての役割も果たしてくれます。
ポイント④照明にこだわる
インテリアだけでなく照明にこだわるのも、ミッドセンチュリースタイルの部屋を作るうえでは大事なポイントです。
ミッドセンチュリーインテリアは個性的でカラフルなデザインのものが多いため、照明まで奇抜なデザインを選ぶと、部屋全体にまとまりがなくなります。
小ぶりなテーブルランプやペンダントランプを設置すると、個性あふれるミッドセンチュリーインテリアの雰囲気を損なわず、おしゃれな空間に仕上がります。
ジョージ・ネルソンの『バブルランプ』やイサム・ノグチの『AKARIシリーズ』など、有名デザイナーの作品を取り入れるのも、おすすめです。
照明の明るさを落とすと、さらに垢抜けた印象を与えます。
賃貸物件でミッドセンチュリーインテリアを取り入れる方法
自由にDIYができるマイホームとは違い、賃貸物件は原状回復の義務があるので、内装を大きく変えることができません。
しかし、賃貸物件でもちょっとした工夫で、壁や床をミッドセンチュリースタイルに変更できます。
ここからは、リメイクシートやクッションフロアなどを活用したアレンジ方法を紹介します。
リメイクシートを使用する
DIYの流行とともに、気軽に貼って剥がせるリメイクシート(インテリアシート)の人気も高まっています。
ひと口にリメイクシートといっても、レンガ風や花柄など、種類はさまざまです。
また、壁の全面に貼るのではなく、一部に貼るだけでも、部屋の雰囲気をミッドセンチュリースタイルに近づけることができます。
ミッドセンチュリーインテリアとの調和を考えている方は、ストライプやビビットカラーのリメイクシートがおすすめです。
ただし、リメイクシートによって接着面の強度はさまざまなので、剥がすときに、壁にのりが残ってしまうケースもあります。
購入する際は、事前に商品説明や口コミなどを読んで確認しておきましょう。
クッションフロアを敷く
賃貸物件の床材が、ミッドセンチュリースタイルにマッチしない場合は、クッションフロアを敷いてアレンジするのもおすすめです。
既存の床の上に敷いて使うものなので、賃貸物件でも安心して使用できます。
ビビットカラーのインテリアを取り入れる際は、落ち着いた色味のものを選びましょう。
また、レトロフューチャーな雰囲気を演出したいときは、大理石調やリノリウムのデザインが、インテリアにマッチします。
リメイクシートと同様、接地面の種類はさまざまで、両面テープで貼り付けるタイプや、吸着素材でそのまま敷けるタイプがあります。
穴が目立たないピンやフックを使う
壁面に飾る時計やポスターも、ミッドセンチュリースタイルの部屋を構成する大事な要素の一つです。
賃貸物件では、壁にピンを刺すのを躊躇して、時計やポスターを飾ることを諦めてしまう方も多いでしょう。
しかし現在では、穴が目立たないピンやフックが、数多く展開されています。
種類によって針のサイズに差があるので、不安な方は一度、壁の目立たない場所で確認しておきましょう。
ピンやフックは、ホームセンターや100円ショップなどで、購入できます。
ミッドセンチュリーインテリアの代表的なデザイナー
ここからは、ミッドセンチュリーの人気を作り上げた有名デザイナーを、代表作とともに紹介します。
チャールズ&レイ・イームズ
チャールズ&レイ・イームズ夫婦は、ミッドセンチュリーを代表するデザイナーです。
日本では、1995年に雑誌『BRUTUS』に、特集「イームズ 未来の家具」が掲載されて、ブームが巻き起こりました。
イームズ夫婦の活動は第二次世界大戦を挟んでおり、戦後すぐに、新素材であるプライウッドの研究と開発を行いました。
イームズ夫婦の代表作の一つに、背もたれと座面が一体化した『シェルチェア』があります。
現在ではインテリアという枠を飛び越えて、駅のホームのベンチなどにも、そのデザインが採用されています。
また、2人の活躍は家具だけに留まりません。
建築デザインやグラフィックデザインなど、幅広い分野で才能を発揮していました。
チャールズ&レイ・イームズの代表作
- プライウッドチェア
- ラ・シェーズ
- プラスチックシェルチェア
- ワイヤーチェア
エーロ・サーリネン
エーロ・サーリネンは、1923年にフィンランドからアメリカへ移住し、クランブルック・アカデミー・オブ・アートで、チャールズ・イームズに出会いました。
その後、2人は協力して、プライウッドでの家具製作の技術を研究し、ミッドセンチュリーを代表する名作をいくつも生み出しています。
エーロ・サーリネンは、近代的なデザインを得意としています。
背もたれと座面が一体化し、美しい曲線を描いた『チューリップチェア』は、彼の代表作です。
また、彼はインテリアのデザインだけでなく、数々の建築物も手がけています。
『GM技術研究所』や『TWA空港ターミナル』は、曲線を多く取り入れたデザインで、未来的な雰囲気があります。
エーロ・サーリネンの代表作
- チューリップチェア
- ウームチェア
- オーガニックチェア
ハリー・ベルトイア
1930年にイタリアからアメリカに移住したハリー・ベルトイアは、1937年にクランブルック美術アカデミーに入学しました。
イームズ夫婦やエーロ・サーリネンをはじめとする、ミッドセンチュリーで有名なデザイナーたちも同時期に在籍しています。
ハリー・ベルトイアが得意としていたのは金属加工で、機能や形状など、さまざまな分野の研究を重ねて生み出した『ダイヤモンドチェア』は、彼の代表作です。
また、先ほど紹介したイームズ夫婦やエーロ・サーリネンの作品にも、彼の金属加工の技術が取り入れられています。
工房を提供したKnoll(ノル)は、現在でも彼がデザインした家具を販売しています。
ハリー・ベルトイアの代表作
- ダイヤモンドチェア
- ベルトイア ベンチ
- ハイバックチェア
ジョージ・ネルソン
ジョージ・ネルソンは、ミッドセンチュリーを代表するインテリアデザイナー兼建築家です。
家具のデザインはもちろん、大学の講師や建築雑誌の副編集長を務めるなど、その才能は、留まるところを知りませんでした。
1945年からは、ハーマン・ミラー社のデザインディレクターに就任し、当時無名だったイームズ夫婦やイサム・ノグチの才能を見出しました。
彼が手掛けた作品は数多くありますが、なかでも独創的なデザインの『ネルソンクロック』は、代表作として有名です。
ジョージ・ネルソンの代表作
- ネルソンクロック
- マシュマロソファ
- ココナッツチェア
- バブルランプ
イサム・ノグチ
イサム・ノグチは、1904年に日本人の父とアメリカ人の母とのあいだに生まれました。
レオナルド・ダ・ヴィンチ美術学校で彫刻を学び、1927年には世界的アーティストの登竜門であるグッゲンハイム・フェローシップを受賞しています。
彼は、彫刻で培った才能を活かして、インテリアデザインやランドスケープデザインも手掛けていました。
ジョージ・ネルソンの誘いで、ハーマン・ミラー社でも作品を製作しています。
Vitra(ヴィトラ)の『コーヒーテーブル』や株式会社オゼキの『AKARIシリーズ』、北海道の『モエレ沼公園』の設計などが、主な代表作です。
イサム・ノグチの代表作
- コーヒーテーブル
- AKARIシリーズ
- プリズマティックテーブル
- ダイニングテーブル
ミッドセンチュリーインテリアでおしゃれな空間を作ろう
本記事では、ミッドセンチュリーインテリアを取り入れる際のポイントを紹介しました。
ミッドセンチュリーインテリアはビビットカラーで個性的なデザインのものが多く、手軽に取り入れるのが難しいアイテムです。
しかし、ポイントやコツを押さえれば、誰でもおしゃれな空間を作れます。
ぜひ本記事を参考に、魅力的なミッドセンチュリーインテリアを取り入れてみてくださいね。
PIECE STYLEは、ミッドセンチュリースタイルをはじめとするアメリカンスタイルの家づくりを、設計から施工まで、すべて手がけています。
インテリアについてのお悩みをヒアリングしたうえで、ご提案させていただくので、ぜひお気軽にご相談ください。